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 HOME > 研究内容 > MID(Molded Interconnect Device) > ワンショットレーザ法によるMID部品内面への回路形成

MID(Molded Interconnect Device)

ワンショットレーザ法によるMID部品内面への回路形成究

目的

 当研究室ではMIDのメカトロ部品等への応用を目指し,工法,デバイス,システムについての研究を行っている.MIDの工法には様々なものがあり,中でもスパッタ蒸着された金属薄膜をレーザ加工することによって回路を形成するワンショットレーザ法(図 1)は回路の微細性の面で最も優れているが,レーザ照射時に陰になる管等の内面には回路形成ができない.内面への回路形成が可能となれば,図 2に示すようなアクチュエータやエンコーダ等のメカトロデバイスとしての応用も期待できる.当研究室では,円筒管等の射出成形品内面への回路形成を目指して,成形品の素材に光吸収の少ないものを用いて,成膜していない面からレーザを照射し,その透過レーザ光により成膜面へ回路を描画する方法を開発している.

ワンショットレーザ法
図1 ワンショットレーザ法
 円筒形静電アクチュエータ
図2 円筒形静電アクチュエータ


蒸着金属膜の非成膜面からのレーザ加工

 図 3に示されるように,透明プラスチック平板の表面に金属膜を蒸着し,非成膜面側からの平板を通してこの蒸着膜を加工した.平板の材料には,近年光学素子の材料として注目されている環状オレフィンと直鎖オレフィンのコポリマー(COC)を用い,レーザ光には波長351nmのTHG-YAGレーザを用いた.図 4に示されるように,加工の微細性に関しては,裏面から加工した場合でも成膜面側から加工した場合と同等の性能が得られた.レーザ強度を大きくすると図 5に示されるようなダメージが確認されたが,このダメージが発生した場合でも膜の加工に変化はなかった.また,レーザ強度を小さくすることによってこのダメージは回避することができ,そのような強度でも膜の加工を行うことができた.さらに,レーザが透過した跡の所々に図 6に示されるようなダメージも観測された.このダメージは薄膜の加工に影響を及ぼし,レーザ強度を小さくすることによって,ダメージの発生頻度を低下させることは可能であるが,消滅させることはできなかった.なお,本ダメージはレーザの波長を長くすることや,紫外線の吸収が非常に小さいPMMAを用いることによって完全に回避された.

平板上の蒸着薄膜の加工試験
図3 平板上の蒸着薄膜の加工試験
裏面から加工結果
図4 裏面から加工結果
回避可能なダメージ
図5 回避可能なダメージ
回避不能なダメージ
図6 回避不能なダメージ


円筒管内面へのレーザ加工

 遠心成形により,外径12mm,内径7.8mmの熱硬化型アクリル樹脂を円筒形状に加工した.内面には無電解銅メッキを施した.ステッピングモータによる回転と水平移動を備えた装置(図 7)を用いて,レーザの照射位置を固定して,ワークを動かすことにより銅薄膜上でレーザを走査させた.図 8は内面に螺旋状のレーザ加工を行ったものである.ピッチ960μmの螺旋パターンを320μmずつオフセットし3相の螺旋を描画した.図 8 (b)は円筒を分割し,内部を直接観察したものである.線幅,スペース幅それぞれ100μm,220μmのパターニングが可能であった.


図7 レーザ加工装置


図8 円筒間の内面加工


静電モータへの応用

 作成したPMMA円筒管を用いて円筒型静電モータを作成し,駆動試験を行った.製作した静電モータの外観を図9に示す.


図9 製作した静電モータ

 実際の駆動の様子を示す。表示されない場合はこちら


Windows Media Video 9 / 51秒


まとめと今後の展開

 本研究では,様々なMIDの製造方法の中で最も高い分解能が得られるワンショットレーザ加工法に関して,陰になっている部分へのストラクチャリングが可能な加工法を提案して,実際に円筒管の内面への加工を行い,静電モータとして駆動させることに成功した.今後は,透明な樹脂のみならず,曇はあるが透過率が得られる樹脂などへの応用も検討していく予定である.




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